
納税者を救済するための制度には、処分庁に対する「再調査の請求」、国税不服審判所長に対する「審査請求」という行政上の救済制度(不服申立制度)と、裁判所に対して「訴訟」を提起して処分の是正を求める司法上の救済制度があります。
ここでは、2023年(令和5年)6月に発表された資料から、直近5年間の相続税・贈与税に関する再調査の請求、審査請求、訴訟の発生状況をみていきます。

国税庁の「令和4年度における再調査の請求の概要」によると、「再調査の請求」は、税務署長などが更正・決定や差押えなどの処分をした場合に、その処分に不服がある納税者が税務署長などに対してその処分の取消しや変更を求める手続きをいいます。
この資料から、2018年度(平成30年度)以降の相続税・贈与税の再調査の請求件数をまとめると、表1のとおりです。

2018年度には100件以上あった再調査の請求件数は翌年度には半減し、2022年度には34件になりました。なお、2022年度の再調査の請求件数は全体で1,533件であり、相続税・贈与税の請求件数が全体に占める割合は2.2%となっています。

国税不服審判所が発表した「令和4年度における審査請求の概要」によると、審査請求は税務署長や国税局長などが行った処分に不服がある場合に、その処分の取消しや変更を求めて、国税不服審判所長に対して不服を申し立てる制度です。
この資料から、2018年度以降の相続税・贈与税の審査請求件数をまとめると、表2のとおりです。

2022年度の審査請求件数は111件で、直近5年間では最も少なくなりました。2022年度の審査請求件数は全体で3,034件となっており、相続税・贈与税の審査請求件数が占める割合は全体の3.7%です。

国税庁が発表した「令和4年度における訴訟の概要」から、処分庁の相続税・贈与税の処分について、是正を求めた訴訟の2018年度以降の発生件数をまとめると、表3のとおりです。

2022年度の訴訟発生件数は20件で、3年ぶりに増加に転じました。2022年度の訴訟発生件数は全体で173件となっており、相続税・贈与税の訴訟発生件数が全体に占める割合は11.6%です。
相続税・贈与税の訴訟発生件数が訴訟発生件数全体に占める割合は、相続税・贈与税の再調査の請求件数や審査請求件数よりも件数全体に占める割合が高くなっていることがわかります。
相続に関して不安や疑問な点がございましたら、お気軽に当事務所にご相談ください。
本情報の転載および著作権法に定められた条件以外の複製等を禁じます。
- 4万人台で推移する相続時精算課税の申告人員2023/08/20
- 減少に転じた贈与税の暦年課税の申告人員2023/07/20
- 都市圏に多い相続税支払いのための土地売却2023/06/20
- 過去最高を更新する国外財産調書の提出件数2023/05/20
- 2年連続で増加した相続税の簡易な接触件数2023/04/20
- 増加に転じた相続税の実地調査件数2023/03/20
- 国税局別にみる相続税の課税割合は上昇傾向2023/02/20
- 9%を超えた相続税の課税割合2023/01/20
- 遺言書保管事実証明書などの交付請求件数の推移2022/12/20
- データでみる自筆証書遺言書保管制度の現状2022/11/20
- 増加に転じた相続時精算課税の申告人員2022/10/20