相続した実家が遠方で、管理ができず困っています。何か良い方法はありませんか?
親が亡くなり、実家を相続しました。実家は築50年を経過しており老朽化が目立ちます。現在は空家の状態ですが、遠方のため管理ができず、解体を考えました。しかし、余分な費用はかけたくないですし、更地にすると固定資産税が6倍になるといわれ躊躇しています。何か良い方法はないでしょうか。
空家等対策の推進に関する特別措置法が改正され、放置した空家の敷地に係る固定資産税及び都市計画税が大幅に増額となる可能性があります。一方、相続したご実家を売却した場合、空家の3,000万円特別控除が利用できる可能性がありますので、ご実家を利用する予定がなければ、売却をご検討されてはいかがでしょうか。
所有している土地が住宅の敷地の場合、固定資産税及び都市計画税(以下、固定資産税等)の住宅用地特例が受けられます。住宅用地特例は、200u以下の部分の固定資産税の課税標準額は1/6、都市計画税の課税標準額は1/3に、200uを超える部分の固定資産税の課税標準額は1/3、都市計画税の課税標準額は2/3に減額される制度です。固定資産税等は、課税標準額を基に計算されるため、税金の負担は軽くなります。
ご実家を取り壊した場合、建物の固定資産税等は課税されなくなりますが、住宅用地特例の適用外となるため、土地の固定資産税等の負担はかなり重くなります。特に、今回のご相談のように老朽化が進んでいる場合、建物の固定資産税等の負担が軽いため、取り壊ししない方が、固定資産税等の負担は断然軽いと考えられます。
(※)取り壊しを行い更地にした場合、固定資産税は大幅に増額となりますが、通常、非住宅用地の課税標準額は価格(固定資産税評価額)の70%以下になるよう負担調整されていますので、6倍になることはないと思います。
小規模住宅用地 (200u以下の部分) | 一般住宅用地 (200uを超える部分) | |
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固定資産税の課税標準額 | 価格×1/6 | 価格×1/3 |
都市計画税の課税標準額 | 価格×1/3 | 価格×2/3 |
2.の仕組みが空家を増加させている要因の一つとして考えられたため、平成27年に空家等対策の推進に関する特別措置法(以下、空家法)が施行されました。適切な管理が行われていない空家は「特定空家等」に分類され、市区町村長から勧告を受けると、その敷地は住宅用地特例の適用対象から除外されることになります。
また、令和5年12月13日には空家法が改正施行され、「管理不全空家等」が新たに分類されました。管理不全空家等は、適切な管理が行われていないことにより、そのまま放置すれば特定空家等に該当する恐れがある空家等のことをいいます。管理不全空家等についても、市区町村長から勧告を受けると、住宅用地特例の適用対象から除外されます。
ご実家を取り壊さない場合、さらに老朽化が進み、屋根や外壁等の落下による事故が起こらないとも限りません。そのような状況になると、「管理不全空家等」や「特定空家等」に分類され、固定資産税等の住宅用地特例の適用対象から除外される恐れがありますので、そのまま利用することなく所有されることはお勧めできません。
ご実家は築50年を経過しており、空家の3,000万円特別控除が利用できる可能性があります。この制度は、建物が昭和56年5月31日以前に建築されているなどの要件が揃うことで、譲渡所得から最高3,000万円まで控除ができる特例です。この制度を利用することができれば、譲渡所得が生じても、納付する税金が抑えられます。
なお、この制度は、相続開始の日から起算して3年を経過する日の属する年の12月31日までに、建物の耐震改修工事(耐震性のない場合)または取り壊しを行い、土地を譲渡することが条件になります。土地の売却には、ある程度の時間を要しますので、本制度を利用される場合は、早めの行動をお勧めします。
(※)令和6年1月1日以降の譲渡から、売買契約に基づき、譲渡後、譲渡の日の属する年の翌年2月15日までに当該建物の耐震工事または取り壊しを行った場合であっても、適用対象に加わることになりました。
<参考>
東京都主税局「固定資産税・都市計画税(土地・家屋)」
国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律(令和5年法律第50号)について」
国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」