文書作成日:2024/01/05
何が延長されるの? 事業承継税制

令和6年度税制改正大綱では、事業承継税制に関する延長措置が出ましたが、何が延長されるのでしょうか?

Q
今月のご相談

 息子である専務の社長就任にあわせて、私が所有している会社(非上場)の株式を贈与しようと思います。
 「事業承継税制」を利用すればこの贈与に係る贈与税が免除されるようですが、事前の計画の提出が2024年3月31日までと聞きました。今から作成して間に合うか、正直自信はありません。そのような中、先日、令和6年度税制改正大綱が公表されて事業承継税制に関する延長措置が出たことを知りましたが、何が延長されるのでしょうか?

A-1
ワンポイントアドバイス

 令和6年度税制改正大綱において、事業承継税制について事前に提出する計画の提出期限が2年延長される措置が記載されています。

A-2
詳細解説
1.事業承継税制とは

 事業承継税制とは、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(いわゆる「円滑化法」)」に基づく認定を受け、会社や個人事業の後継者が取得した一定の資産について、贈与税や相続税の納税を猶予・免除する制度をいいます。

 事業承継税制は、大きく、非上場会社の株式等を対象とする「法人版事業承継税制」と、個人事業者の事業用資産を対象とする「個人版事業承継税制」に分かれます。

 ご相談のケースは、非上場会社の株式ですから、法人版事業承継税制を指します。

 法人版事業承継税制には、以下2つの措置があり、現行における主な相違点は、下表のとおりです。

●現行における特例措置と一般措置の主な相違点
特例措置 一般措置
事前の計画策定等 特例承継計画の提出
[2018年(平成30年)4月1日から2024年(令和6年)3月31日まで]
不要
適用期限 次の期間の贈与・相続等
[2018年(平成30年)1月1日から2027年(令和9年)12月31日まで]
なし
対象株数 全株式 総株式数の最大3分の2まで
納税猶予割合 100% 贈与:100%
相続:80%
承継パターン 複数の株主から最大3人の後継者 複数の株主から1人の後継者
雇用確保要件 弾力化 承継後5年間
平均8割の雇用維持が必要
事業の継続が困難な事由が生じた場合の免除 あり なし
相続時精算課税の適用 60歳以上の者から18歳以上の者への贈与 60歳以上の者から18歳以上の推定相続人(直系卑属)・孫への贈与
出典:国税庁「非上場株式等についての贈与税・相続税の納税猶予・免除(法人版事業承継税制)のあらまし(令和5年6月)」
2.令和6年度税制改正大綱

 令和6年度税制改正大綱(以下、大綱)において、法人版事業承継税制に関する延長措置として、「特例承継計画の提出期限を2年延長する」旨が記載されています。

 これは、上記1.の2024年3月31日までとしている期限を2年後の2026年3月31日までとすることを指します。

 なお、今回のご相談には関係ありませんが、個人版事業承継税制についても同様の改正案が記載されています。

3.留意点

 上記2.のとおり改正されますと、事前の計画策定や提出に猶予期間が設けられることとなるため、ご相談のケースにおいても十分提出は可能かと思われます。

 ただし、適用期限は今回の延長措置に含まれていない点に、ご留意ください。

 なお、今般のご相談は特例措置の適用を前提としていますが、一般措置であれば事前の計画の提出も不要で、適用期限もありません。ただし、特例措置と一般措置では適用要件等が異なる部分もあるため、どちらの措置を適用するかは両者をよく比較検討されるとよいでしょう。

 事業承継税制に関するご相談は、お気軽に当事務所までお問い合わせください。

<参考>
国税庁HP「事業承継税制特集
自由民主党・公明党「令和6年度税制改正大綱」

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